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ソフトウエア立国を目指す~21世紀の日本の新たなビジョンとして~ [経済]

 21世紀の日本は、「ソフトウエア立国」を国の新たなビジョンに掲げてやってみてはどうだろう?「コンピュータ、ソフトがなければただの箱」というセリフは、コンピュータがまだスタンドアローンのメインフレーム(大型計算機)が主流だった時代から言われ続けてきた言葉だったが、日本はハード偏重主義でやってきた。それも「モノ」が中心だった20世紀の時代では、間違った選択ではなかったのかもしれない。しかし今、「情報」がインターネットを介して有機的に結びつく時代の到来とともに、ハード→ソフトの軸足の移動はもう絶対に避けては通れないものになってしまった。そして経済の世界では、それは直接の製品開発から、その母艦のソフトウエアの集合体である「プラットフォーム」を中心とした戦いになってきている。

 戦後の日本は、それまでの天皇制のような日本固有の価値観が全て破壊されてしまったために、日本人は本当に目に見えるモノしか信用しなくなってしまった。それは20世紀のモノが中心だった時代にはプラスに働いた面もあったが、逆に、日本人の思考の範囲を狭めてしまって、特にソフトウエアのような抽象的思考の産物を軽視する傾向になってしまった。モノがどんどん複雑になっていって、それがシステムになっていく場合、そこでの主役が、ハード→ソフトになっていくのは技術の必然の流れである。特にそれが現在のようなデジタル技術が中心である場合は、なおさらである。

 11月上旬にUstreamで経産省主催の「新しい日本の創造」を考えるという番組で、日本人は、何故プラットフォームを作るのが苦手なのだろう?というようなことが論じられていた。プラットフォームとは、簡単に言ってしまうと、ソフトウエアの知の集合体である。その中にもちろんハードウエアも含まれていてもいいわけだが、プラットフォーム全体を作る労力の比率で考えた場合、ざっと言っておそらく、ソフト対ハード=10:1くらいの比率になると思う。日本の場合は、ハードで何か凄いモノを作ることしか考えてないか、考えていてもソフトは後回しで上記の比率が全く逆になってしまっているため、いつも失敗しているように感じる。旧日本軍が空母というプラットフォームを作るのに失敗した理由や現在の大手電機のクラウドのプラットフォーム作りがうまくいかないのも同じところに原因があるように思う。

 ある雑誌の中に、今の日本の電機の苦境は80年代に蒔かれた投資の決断にあるという趣旨のことが書かれてあった。80年代と言えば、日本の産業界の一人勝ちの時代、まさに黄金期である。その時に、アメリカは次の30年を見据えてソフトウエアに投資した。一方日本は半導体に投資した。その結果が今の状態だ。アメリカではソフトウエアが大きく花を開き、逆に日本では半導体は韓国や台湾勢に越されてしまって、青色吐息の状態だ。(ちょっと補足しておくと、アメリカは半導体についても、インテルがマクロプロセッサーという半導体の中の最重要LSIに関してはその設計と製造を確保している。IBMも半導体への投資は限られているが、自前のマイクロプロセッサーの設計は捨ててないし、アップルもモバイル用のA3、A4プロセッサーの設計は自前で行っている。それに対して日本は半導体に莫大な投資をしておきながら、マイクロプロセッサーはインテル、アーム頼みで、半導体としてはもう後進国に出してしまえばいいような、スタンダードセルやゲートアレイのLSIの設計を延々と続けている。)

 日本の電機は30年前の投資に失敗したわけだから、これから間違いなく沈むだろう。しかし、同じようにこの先30年後の未来は今の投資にかかっている。そして、今の日本の悲劇は、アメリカのようにベンチャーで新たなソフトウエア産業の会社が生まれてこないことだ。まずは国が、国としてのハード→ソフトの路線の変更を明確なビジョンとして打ち出すべきだろう。現状の企業の中で、この組み換えを行うのは容易なことではないし、経団連からも猛反発を食らうのは必至だろう。ハードで一世を築いた企業も社会に対するその役割が終わったと考えるなら、無理やり生き残るより、余力のあるうちに解散し、業界挙げての組み換えを行った方がいいのかもしれない。また、若い人がソフトウエアで起業しやすいように国がそのバックアップ体制を整えることも必要だろう。それに合わせて大学の理系のカリキュラムなどもソフトウエア寄りに見直すことなども早急にやらなければいけないことだろう。

by チイ


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