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2045年問題(特異点問題) [コンピューター]

 2045年問題(特異点問題)というのをご存知だろうか?コンピュータの指数関数的な処理能力の爆発が人類全体の能力を超えてしまう点をいいます。特異点に達すると、量が質に転化されるようになって、それは単にコンピュータの処理能力の向上にとどまらず、「意識を持ったコンピュータ」や「知能を持ったコンピュータ(自らが思考するコンピュータ)」といった人工知能やロボットも含みます。米の未来学者のレイ・カーツワイルはこの技術的特異点を2045年頃と予言しています。今からおよそ30年後の未来になりますから、私の場合、それを見届けられるかどうかは微妙なところです。日本ではこの手の話はSFの世界のことのように感じられるかもしれませんが、欧米では現在現実の問題として、真剣に研究、討論がされています。

 今、欧米では既にポスト・クラウドの動きとして、2045年に向けた本格的な人工知能(AI)のプロジェクトがいくつか動き出しています。

  • Singularity University  米のシリコンバレーNASAのエームス・リサーチセンター内に設立。米政府、NASA、グーグルなどがバックアップ。人工知能、応用コンピュータ技術、ナノテク、バイオテクノロジー、情報技術などの研究。(カ―ツワイルは、この特異点大学の設立者のひとりでもある。)

        http://singularityu.org/

  • SyNAPSE(Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics)  米のIBMが始めた計画で、「認識するコンピュータ(Cognitive Computing)」の開発を目指す。現在、米国防省、アメリカの大学も参画して、「進化したアルゴリズムとシリコンの神経回路を駆使して、経験を通じて学び、事象間の相互関係を見出し、仮説を立て、蓄積していく」コンピュータを目指す。計画はフェイズ0~3の4段階からなり、現在フェイズ1、2は既に完了していて、この電気的なシナプスと記憶回路を持つ脳チップのプロトタイプは完成している。最終的には、1億のニューロンを持つチップを作り、人間と同レベルの100億のニューロンを持つ人工頭脳を作る計画。

        http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/35251.wss

  • Human Brain Project  欧のスイス連邦工科大学の脳精神研究所のヘンリー・マークラムを中心とした、Blue Brain Projectが元になっている。大脳の新皮質のカラムに着目して、脳内の化学反応をコンピュータでシュミレーションする。現在、マウスの脳をシュミレーションしている段階で、2023年には人間の脳の段階を目指している。最終的にはIBM同様「ニューロ・モルフィック・チップ(Neuromorphic Chip)」と呼ぶ全く新しいタイプのコンピュータ・チップの開発を目標にしている。EUを中心に、256の研究グループ、120の研究所、20の会社、24の国が参加予定。

         http://www.humanbrainproject.eu/

  複雑系も戦後の「サイバネティックス」、「カタストロフィー」、「カオス」、「ニューラル・ネットワーク」「遺伝的アルゴリズム」などその道具となる要素立ては出そろいつつあるように思う。後は、これらを統合した形での「創発」や「生命」といった問いに科学として答えられるようにならなければ、人工知能は実現しないかもしれない。もう一段深いレベルでの非線形科学としてのブレークスルーも必要になってくると思われる。今後人類が探索すべき問題は、「宇宙」、「生命」、「頭脳」の3つだそうです。数学者のイアン・スチュアートは21世紀は数学と生物学が結婚する時代になるとも言っています。欧米では、1972年に提出されたローマクラブの「成長の限界」によるエネルギー文明の行き詰まりから、新たな情報文明へ移行できるかどうかが人類存続のカギになると考えられているのです。世界経済が破綻すると言われている2030年頃までに、経済に余力のあるうちに何とか人工知能の開発を成功させたいと思っているわけです。

 日本は、1982年に官民共同の第5世代コンピュータ・プロジェクトというものをかなり大きな国家予算を投じて進めたが、結局は人工知能の開発に失敗している。(日本の研究開発で成功しているものは、全て応用研究開発プロジェクトだと思います。日本人は体系をつくらないので、その基礎を自分達で作らなければいけないようなプロジェクトは全て失敗していると思います。)こうした前例から、日本は人工知能開発におよび腰です。上記の欧米のプロジェクトについても結末は同じではないかというシニカルな見方もあるようですが、私は50%以上の確率で実現する可能性があるのではないかと思っています。(もっとも、科学的にコンピュータが意識や知能を持つことは不可能だと証明されてしまう可能性もあると思いますが、私としてはできる方に賭けてみたいのです。)いずれにしても、このままやっていると、日本はクラウドや人工知能で欧米に対して大きく遅れを取ることになってしまうと思います。

 現在、日本ではアベノミクスのおかげで、円安になり企業の株価も上昇して表面上は経済が上向いてきているようにも見えるが、経済学者の間でも、アベノミクスの生みの親でもある、リフレ派のエール大学の浜田宏一氏と反対派の吉川洋氏や野口悠紀雄氏との間で経済論争が戦わされている。私は、経済に関してはど素人なので、どちらの意見が本当に正しいのかはよく分からない。ただ、ひとつだけ言えるのは、アベノミクスの中には、現在の最先端の非線形科学の経済理論の知見を盛り込んだような斬新さが何も感じられない。まるで100年前の20世紀の単品物のモノ作りの経済政策をもう一度やりましょうと言っているようにしか見えない。今欧米の経済はモノを所有しない経済へと大きく舵を切ろうとしている。そんな時、クライアントのハードの製品を今まで以上にたくさん作って売ることで強い経済を取り戻すと言っているのであれば、多分うまくいかないと思う。


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コメント 1

やー

通りすがりの者です。
コンピュータの性能からして、あと10年程度で実現する可能性は高いでしょうね。
コンピュータが意識や知能を持たないと証明するのはほぼ不可能だと思いますよ。何せ生物学的コンピュータである人間の脳が意識や知能を持ってしまっているのですから。
極端な話、生物学的コンピュータを作れば持たせられるでしょうし、そうでなくともシステムを真似し続ければいずれ出来ると思います。
by やー (2013-02-21 14:57) 

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