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単品モノの面白いハードウエアを短期間で作ってしまうような能力はもう不要になってしまったのかもしれない [製品]

 戦後の日本の復興を支えた得意な技術に、「単品モノの面白いハードウエアを短期間に作ってみせる能力」があった。当時の日本のインテリ達が欧米の文献などの中から技術的に応用できそうなものを見つけてきて、何か面白い役に立つ製品を短期間で作ってしまうような能力で、戦後まもない頃の貧しい社会情勢の中にあっては、会社に一番金のかかる基礎研究開発費を負担させないで済むので、この能力は特に重宝された。欧米からもまだ地球地下資源が無尽蔵にあるという前提のもとで、彼らの考え出した原理や技術を応用して世界経済を拡大発展させてくれる日本を好意的にも見てもらえた。

 しかし戦後から今日に至る、この手法で開発された製品の寿命期間を注意深く見ていると、最初はそれで何十年にも渡って優位性を保てていたものが、それが10年になり、最後の方にはたった数年で賞味期限切れというパターンが多くなってきている。日本の企業ではこの能力の高いエンジニアは天才エンジニアと称賛されてもてはやされた時期もあったが、よく考えてみるとこの手法は他人が考え出したものを目ざとく見つけてきて、それを拝借して応用して製品を作ってしまうといったあまり褒められたやり方ではないのも確かだ。

 今日、グーグルやアップルの成功を見て、日本の大手企業でクラウド・コンピューティングの戦略を考えてない企業はまずいないと思う。最近ではよくクラウド・コンピューティングが巨大な生態系(エコシステム)にたとえられたりもする。そのエコシステムの中で多種多様な製品群が出てきて多くのモノが売れると考えられているからだ。今日本の企業の本音は、本当はクラウドなんかやりたくないのだが、自分たちの作った単品モノの製品をネットに無理やり繋げて「クラウド」という言葉を冠さないと売れないからだ。要するに、クラウドを自分たちの作った単品モノのハードを売るための手段としてしてしか考えていないように私には思われる。なので、実際日本のクラウド・コンピューティングは、グーグルやアップルの後手に回って全然うまくいっていない。

 このブログにも書いた「インフォーグ革命」(2009-11-05)の中でルチアーノ・フロリディも言っているように、クラウドの本質は、世界がネットを介して有機的に繋がるようになれば、人がモノを所有する理由も必然性もだんだん小さくなっていくということだ。クラウド時代の新たなモノ(ハードウエア)の生態系は確かにこれから出来上がっていくことになると思うが、それは人のモノの所有を確実に減らす方向で、メインの有機的な情報を補佐(サポート)していくような形で出来上がっていくことになるはずだ。ハイパー消費の時代のように単品モノのハードウエアがクラウドの生態系の中で数多く出現して売れていくようなことにはならないと思うし、実際、もしそうなってしまうのであれば、クラウドをやる意味というのは全くなくなってしまう。

 現在、日本のクラウド・コンピューティングがうまくいっていないのは、クラウド、クラウドと連呼しながらも、実際には単品モノのハードウエアを短期間で作ってみせるような能力(仕事の仕方)から全然抜け出せてないためだと思う。そしてさらに言うと、G20でのモノの消費で地球地下資源の枯渇が叫ばれている中、この能力はこれからさらに貴重となる地球地下資源をただ浪費するだけの、人類にとってもう全く必要のない能力になってしまうかもしれない。

 最近、某メーカーで1億人近くの顧客の個人情報が漏洩する事件が起きたが、サーバーなどの管理は欧米の下請けの下請けに任せていたようだ。日本の主力のエンジニア達は、相変わらず単品モノのハードを作り続けて、自分たちが主力(メイン)で、サーバーセキュリティーの仕事など自分たちがやる仕事ではないと思っているのかもしれないが、実際グーグルなどは毎日のようにハッカーの攻撃にさらされていて、そのハッカーとの知恵比べでソフトウエアやネットワークの技術が進歩していっていることもまぎれもない事実だ。戦艦は空母の時代になって、主力から空母の護衛艦の地位になってしまった。時代とともに必要とされる能力や知識は変わっていく。自分たちが昔のまま主力であり続けられる理由はどこにもない。

by チイ


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