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一万時間ルール [スポーツ]

 錦織圭選手、グランドスラム全米で日本人初の決勝まで進んだが、残念ながら優勝することはできなかった。彼がこのレベルまで到達したことには、13歳からの米テニスアカデミーへの留学が大きいと思われる。ここでは週6日、毎日昼間の8時間テニス漬けの生活となる。日本ではテニスでも野球でもサッカーでも、学生時代は昼間のゴールデンタイムは文科省の定めた一般授業を受けなければならない。練習は授業の終わった午後4時くらいから始まる。日本のアスリートは、所謂アスリートにとっての「死に体」の時間しか練習ができないのだ。将来世界的なアスリートを目指している人にとっては気の毒としかいいようがない。 

 一万時間ルールというのがある。経験則として、どんな分野であろうが、その道のエキスパートになるためには、大体1万時間くらいの技術習得時間が必要であるというものだ。前ブログに「技術的ピーク年齢」のことを書いたが、この2つは通常ペアで適用されることが多い。つまり、ほとんどの分野でその道のエキスパートを目指すのであれば、必要条件として、二十歳くらいまでに、この一万時間ルールをクリアしなければならないということだ。

 今、日本の国内でこのペアルールが暗黙的に適用されているのは、多分アスリートと芸術家の2つくらいだと思う。この2つで世界を目指す人は、多くの場合、文科省の教育方針は完全に無視してやっていると思う。しかし、日本では学問やテクノロジーの世界では一般にこのペアルールは適応されていない。受験が縛りとなって、ほとんどの人が文科省の教育方針に沿って勉強しているので、たとえば博士課程を修了した時点で、その道のエキスパートになれるのであれば、それは28歳を過ぎてからということになってしまう。

 たとえば、ソフトウエアに関してこのペアルールを適応してみると、中高生になって部活でソフトウエアをやりたいと思うような人は、多分小学生の後半くらいから自分が好きでソフトウエアを勉強しているだろうから、小4~6年までの3年間を独学で毎日3時間勉強して、中高の6年間を毎日部活で3時間やったとして、それを大学1年の時まで続けてやっとぎりぎり二十歳までに一万時間をクリアできることになる。この間に、中学受験、高校受験、大学受験があるので、一般的な文科省の勉強もしながらの一日3時間というのは、普通の知能の人には相当厳しいハードルになると思う。

 私自身の感覚では、これからのグローバル化の時代、このペアルールをアスリートや芸術分野だけではなく、学問やテクノロジーの分野まで広げていかないと、日本の国際競争力は低下の一途をたどることになると思う。私がエンジニアになった頃によく言われていたのは、プロセス的なこと(半導体材料や物性的なことなど)はある程度歳をとってからでもやれるが、システム的なこと(アナログやデジタルなどの電子回路)は若い時期にやってないと歳をとってからでの習得は難しいと言われていた。それでも電子回路が産業の中心だった時代には、大学生になってからとか、社会人になってからの20代をがんばれば電子回路のエキスパートにはなれていた。しかし世の中のシステムの中心がソフトウエアになる時代では、20代ではもう遅過ぎるということなのだと思う。

 もちろん1万時間ルールは、ある目安にしか過ぎない。分野にもよるし、もっと時間のかかる人もいれば、もっと短い時間で習得できてしまう人もいる。そしてそれは必要条件であって、十分条件ではないということです。1万時間をクリアした人が全てエキスパートになって創造的で生産的な仕事ができるとは限りません。学びの受け身だけの勉強が得意な人もいるからです。そういう意味でも、この必要十分条件を満たす人材は希少価値になってきます。従来型ではない、アスリート、芸術家以外のこれら希少価値の人材育成が急務になってくると思われます。

by チイ


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