SSブログ

発展と成長 [製品]

 何か新しいことを始めようとする時、「発展」と「成長」の違いをきちんと理解して事を進めているだろうか?たとえば次のような質問。

「あなたは、企業を成長させたいのですか?それとも、発展させたいのですか?」

「日本の経済は成長すべきか?発展すべきか?」 ・・・ などなど。

最近読んでいた2冊の本がある。一冊が「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか~画期的な新製品が惨敗する理由~」。もう一冊が「日本半導体敗戦~なぜ日本の基幹産業は壊滅したのか?~」。この2冊に共通した要点は、日本が過剰技術、過剰品質、過剰性能の製品を作ってしまい、結果事業で負けてしまうケースが非常に多いということだ。

  • 成長(growth)  ・・・ 既存モデルの量的拡大(既存モデルの洗練、磨き上げ。モデルをより                            効果的・効率的に運用し、生産性を向上すること。)

 

  • 発展(development) ・・・ 新規モデルへの不連続的移行(新規性・進歩性に富むモデルを                                     創出し、それを普及・定着させること。)

通常、この2つは車の両輪でどちらが欠けても駄目だが、日本では経済にしろ技術にしろ、圧倒的に「成長」だけのものがほとんどだ。「発展」は、ほとんど無いと言ってもいいし、別の言い方をすれば完全にそれは欧米任せになってしまっている。その結果、「成長」だけに磨きがかかって、その道の極みのような製品を作ってしまう。それも自らの力による「発展」の変化がないので、その洗練、磨き上げは同じ方向性で、その製品が売れなくなるまで永遠に続く。DRAMや撮像素子の容量拡大、半導体の微細化、ディスプレーの画質向上、携帯電話やAV家電製品のオーバースペック(私はこれを「てんこ盛り製品」と呼んでいます。)などなど、・・・ 挙げたらきりがない。

日本人の美意識からすると「成長」だけで十分なのかもしれない。ひょっとしたら、日本人の美意識の中には「発展」は無いのかもしれない。確かに日本人は、「連続」や「線形性」といったことが好きな民族である。だが、これは生命原理という観点からは相応しくない。堺屋太一の書籍にも日本人の陥りやすい陥穽として、この特徴が「ゼロ戦化現象」として語られている。特にこれからの先進国市場の成熟収縮と新興市場の拡大が予想される時代、この負けパターンのケースはどんどん拡大していくだろう。

 20世紀は資源、エネルギーがコモディティーだった時代だ。その時代、基礎や教科書作りは欧米人に任せておいて、日本は最後の応用で実を取ることで稼ぎまくった。ある意味、大量生産、大量消費の時代は「発展」よりも「成長」の方が有利に働いた時代だったとも言える。しかし、ここにきて潮目は大きく変わろうとしている。資源、エネルギーは希少化し、もはや今までの「成長」が続けられなくなってきている。21世紀は、「発展」の頻度が極端に増えて、それに伴って「成長」のスパンはどんどん短くなっていくように思われる。持続可能な社会に向けての「発展」が求められている。

昔から、音楽の事でよく考えていたことがある。もし、日本人が一番はじめに「平均律」を消化したとして、西洋のクラシック音楽の発展史のようなダイナミックな発展が出来ただろうか? と。多分そうはなっていなかっただろう。学校で習う、あのクラシック音楽の発展史、バロック->古典->ロマン派->印象派->現代 という流れは実にダイナミックな平均律の消化の過程なのだ。たとえば、ショパン芸術。ショパンの芸術はショパン一代だけで終わってしまっている。もしショパンが日本人だったら、そのお弟子さんでショパン芸術を継承して、ショパンよりもさらに洗練されたピアノ音楽を書く人が現れて、そのまたお弟子さんがそれ以上にその洗練度を高めて、・・・ という風に限りなく続いていたのではないか?しかし西洋ではそれは一代で終わっているし、だからこそそれに価値があるとも言える。

今は時代が大きく変わろうとしている真っただ中だ。経済にしろ技術にしろ、当然「成長」ではなく「発展」が求められている。そろそろ日本からも「発展型」の真のエリートが出てくる時代になってほしいものである。

book0910072.jpg湯之上 隆著 : 光文社

book0910071.jpg妹尾 堅一郎 : ダイヤモンド社

by チイ


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。