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大不況で世界はこう変わる! [本]

 ”ミスター円”と呼ばれた国際エコノミスト、榊原英資氏による経済予測。この本、まだ一般書店では販売されてないかもしれませんが、この週末に読んでみました。私は元来、株とかもやらない人で、また日本人の大好きな「経済」や「マネージメント」といったようなことにはほとんど興味がない人なのだが、最近、今後の地球環境のダイナミクスに与える影響という観点から、今後の世界の経済活動には着目している。経済なんて自分には関係ないよと思われている人でも、今後の世界経済の発展のしかたによっては、自分の孫の代にあたるころから本当に地球上で暮していけなくなる可能性もあるので、興味のあるかたには是非関心を持っていただきたいと思う。

 ところで、読んでいてびっくりしたのだが、私が今年に入って書いたブログでいくつか自分の意見を書いた内容とほとんど中身が同じというか、言葉までぴったりとあっているのには大変驚いてしまった。これは決して自慢ではなくて(<-お前みたいな経済のど素人に分かる訳ないじゃないか、バカ!)、思うに、私が経済にはほとんど興味がないので、へんな気負いとかが入らないで物事を客観的に見れているためだと思う。

 ところでこの大不況は一般的に言って、解明はそう難しくないが、具体的な解決は困難な不況だ。前半の方の要点をまとめてみると、

  • この世界同時不況は深く長い不況になる。
  • 20世紀型資本主義が終わる。
  • 先進国での”モノ”離れが加速し、”モノ”が売れなくなる。
  • モノづくり(製造業)が落日を迎える。
  • ハイテク製品のコモディティー化と資源・エネルギーの高騰。

一番重要な点は、先進国はすでに”モノ”にあふれていて、”モノ”離れが加速していっているということだ。(これは先進国での中間層が消滅していっていることとも関係している。売るためにはこれから大量の中間層の出現する発展途上国で売るしかない。)したがって、この大不況のトンネルを抜けた後も、先進国で車や電気製品が以前ほどは売れなくなるということだ。製造業を続けていくためには、発展途上国で売っていくしかないが、そこでは性能より価格が第一優先されるため、発展途上国の製造業の安い製品との競争となり、実質泥試合となりそこで勝利してもほとんど意味のない戦いとなってしまう。いずれにしてもこれから先進国で製造業で稼ぐは非常に難しい時代になってくる。

後半の要点をまとめると、

  • 環境・自然・安全・健康・文化・教育が21世紀のキーコンセプトになる。
  • グリーン革命がおこる。
  • 農業・医療と介護・教育・娯楽が成長産業となる。
  • 日本の江戸時代に回帰する。

後半の方は、読んでみましたが、いまいち説得力に欠けるような気がしました。それはある意味当然のことで、20世紀型資本主義の次に来る21世紀のパラダイムシフトは実際にどういうものになるか本当のところまだだれも分かっていないのだと思います。環境(エコ)や農業が本当に産業になるの?といった疑問も生じます。逆に言うと、だからこそこれからその枠組みを自分たちで自由に作れるチャンスがあるということにもなると思います。

 ここからは、私の勝手な意見・・・

 この先世界経済はどのような形態をとるのだろうか?

  • 成長しないで、ただぐるぐる回る(循環する)だけの経済。
  • 循環を基本に、螺旋階段を上るように少しずつ成長していく経済。

のどちらかになるような気がします。ここには書きませんでしたが、20世紀型の右肩上がりの線形な経済成長はもう駄目です。発展途上国を含めて、今後これをやってしまったら、人類は滅亡してしまいます。後、2~3世代くらいで地球上の全ての資源を食い潰し、孫くらいの代から破壊された地球環境と戦争の時代を招いてしまいます。そういう意味でも現状の世界経済の立て直しが、今後の過度の経済成長を期待したプログラムになってしまっていることがすごく気になります。(国の財政赤字の借金も結局、子供や孫の世代のツケに回してしまうことになるのでしょうか?)

 ここで、ちょっと脱線・・・

 実は、私は格闘技大好き人間(<-何故そんな人がクラシックの音楽サイトなんかやっているのかもよく分からない)なのだが、もう亡くなってしまったが、若い頃に読んでいたマンガで、空手の大山倍達がアメリカでのレスラー、ボクサーとの他流試合で連戦連勝で帰りにちらっと立ち寄った香港で太極拳の老人との手合わせで生涯初の敗北をきすることになる。その時言われた言葉が、「あなたの拳法は確かに強いが、直線の拳法だ。太極拳の奥義は点を中心に円を描くことにある。」というもので、それをきっかけに格闘技での円の動きの優位性ということに目覚めるというものがあった。経済もそれと同じ段階に今さしかかっているのだろう。

 ここからは、真面目な話・・・

 今、経済がこのような段階にさしかかっていることは決して偶然でもなんでもない。科学的な観点からも、要素還元論的な線形的な加速から、要素間の相互作用による全体の系のダイナミクスという方向に焦点が移り始めている。これは21世紀のキーコンセプトとも一致している。いわゆる、「物質的モノ」から「生きているモノ」への視点の変化だ。先ほど、21世紀のパラダイムシフトがどういうものになるか本当のところはまだだれも分からないと書いたが、そのことは「複雑性の科学」がまだ科学として完成していないということにも関係している。これが完成されると、多分、経済学、社会学、生物学などの色々な方面についてもある程度具体的な形式化ができるようになると思う。私自身、21世紀の大きなブレーク・スルーとしては、20世紀の成果である要素還元論的な物質の特性と、それらが織りなす系のダイナミクスの2つの組み合わせで新たな産業が生まれてくるような気がする。それが環境ビジネスと呼ばれるものになるかどうかは今のところよく分からないが。

 日本は、20世紀の要素還元論的な線形加速の最後の部分的加速だけ行って成功してきた。今その部分加速してきた全体の加速そのものが見直される時期にきているのだということを認識する必要があると思う。今企業でこの部分的加速で一番成功した比較的若い人をトップに据えて、この危機を更なる部分的加速で乗り切ろうとしているような会社は、早々に潰れてしまうだろう。この不況を構造的な不況ではなくて、従来の循環型の景気悪化と捕えて、昔の成功パターンを再び繰り返す愚は避けた方がよい。多分、これから大手含めてかなりの数の企業が潰れていくことになると思うが、過去のこの部分加速の成功体験の大きい会社から先に潰れていくことになると思う。

 「応用」ということについてもこれからは日本は少し考え直した方がいい。20世紀の資源・エネルギーがコモディティーだった時代は、後追いで、売れ筋のモノを横展開して、生活に応用したモノが面白いように売れた。その結果日本企業がつくるものは「応用の質」が低下してしまって、女子供の使うような本来あまり重要でない、どうでもいいような製品ばかりになってしまった。しかし、これからは資源・エネルギーの希少化に伴い、応用も本当にそれが技術の必然としてそこに絶対になければいけないような優れた応用製品しか売れなくなると思う。少し前にこのブログでも「クラウド・コンピューティング」の記事を書いたが、クラウドはメインフレームにはじまるコンピューターの技術の変遷の中で、必然的に必ずそこに来るべきものとして登場している。今まで、日本はこういった本流の本質的な仕事が苦手だった。しかし、これからは、今の発展途上国の環境問題に顕著なように、後追いでは制約がかかってきて、何もできなくなってしまう傾向にある。本当にオリジナリティーを持って、一番最初にブレークしたもののみが利益を享受できる時代になってきている。そういう意味でも日本にとっても大きく変わらないといけない機会が到来したと考えるべきだ。

10557.jpg 榊原英資著 : 朝日新聞出版

by チイ


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