SSブログ

ヒット商品は点から線になった [製品]

 この7月上旬のEUのCERNでの「ヒッグス粒子」と見られる新粒子発見の報から早2か月が経とうとしているが、皆さんはこの報を聞いて何を思われただろうか?私が一番に感じたことは、EUはアメリカと並んで、いまだに「世界の知の中心」であるということだ。今、EUはユーロの問題を抱えて、経済的には火の車の状態が続いているし、経済評論家の人の中にはEUの時代はもう終わって、これからはアジアを中心としたオリエントの時代になると言う人もたくさんいる。確かに経済だけの問題を見ればそうかもしれないが、(私は、ユーロの通貨統合は、結局はドイツの独り勝ちを許してしまって、結局はうまくいかないだろうと思っている。)私はヨーロッパの底力のようなものを感じた。EUはまだまだ終わってはいない。

 今、科学は「物質」を扱う領域においては、科学の王道である「要素還元論的な手法」が大成功を収めて、その究極である素粒子の世界でも成功を収めようとしている。この物理の素粒子の「力の統一」は、数学の世界では同じように「ゼータの統一」として現在研究されているが、最近ではリーマンのゼロ点の並びが、原子核のエネルギー順位の並びと同じ式で表わされることなども分かってきて、ミクロな世界の時空構造を表わす「非可換幾何学」などとも関係することが分かってきて、究極の世界でも物理と数学が繋がろうとしているように見える。

 所で、実は今私が一番興味があるのは、「非線形科学」だ。今まで、科学は物質などの「命をもたないもの」を対象として成功してきたが、もっと身近な存在である、「生きているもの」を扱う科学はいまだ発展途上にあって、まだ科学の基礎足り得ていないのが現状である。今回のCERNの解析結果が「素粒子の標準理論」にどういった影響を及ぼすかはまだ分からないが、このまま、本当に「要素還元論的な枠組み」の中だけで完結してしまうのだろうか?(普通は、そう考えるだろうし、それはそれですばらしいことではあるのだが。)意外と、副産物として、非線形科学との繋がりや、接点のようなものが見つかってくればさらに面白い展開になっていくのではないかと秘かに期待している。私は、元々物理屋なのだが、現在では仕事の関係上、本来の物理的な内容よりも下記の副産物の方に興味を持っている。

 実は、CERNは本来の目的である、「新素粒子の発見」以外にも多くの副産物を生んでいる。CERNは情報技術の面でも、上に書いた「非線形科学」の最もホットな実験場でもあるのだ。皆さんもよく御存知なのが、「WebはCERNが発祥の地」であるという事実。Webはティム・バ―ナ―ズ=リーを中心としたCERNの物理ファミリーの中から生まれている。ティム・バーナーズ=リーは、「Webの父」とも言われていて、ハイパーテキストの発明者でもあり、最近のHTML5では彼の提唱する「セマンティック・ウェブ」の機能の強化が図られている。また、CERNでは粒子衝突で集積した膨大なデータ(約3200TB/年)を処理するために、世界中のコンピュータをネットで結んで分散処理を行う、コンピューティンググリッドの技術を全面的に採用した世界で最初のプロジェクトにもなっている。行っている実験そのものは、要素還元論的な科学の究極ではあるが、その周りの技術は、これらの最新のコンピュータ・サイエンスに支えられた、非線形科学の最もホットな実験場にもなっているわけだ。

 非線形科学で、最も重要な事は、簡単に言ってしまうと、「繋がって流れている」ことだ。アップルのヒット商品を見てみると、ipod->iphone->ipad->iTVとある意味をもった繋がり(まさにそれがセマンティックということだと思うが)で流れている。モノが中心だった時代は、ヒット商品は点だった。ちょっとしたアイデア、展示会や論文から目で盗み、各部署が勝手に面白い商品を作っていればそれでよかった。しかし、その手法は現在は陳腐化したものになってしまった。ヒット商品は点から線になったように思う。

by チイ


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。